コラム

DXを下支えするIT組織が直面する2つの課題④~IT組織が抱えるコストとリソースの課題への対策(SIAMを活用せよ)~

DXを下支えするIT組織が直面する2つの課題④~IT組織が抱えるコストとリソースの課題への対策(SIAMを活用せよ)~

2023年10月17日

 

著者: 鈴木 智裕

2007年 株式会社ユニリタ(旧社名:株式会社ビーエスピー)入社。ITIL関連、運用改善コンサルティング、人材育成セミナー講師などを担当。コスト削減、ITのビジネス貢献・価値向上といった上流の課題から、現場レベル課題の改善までお客様の潜在的なニーズを見つけ提案型でオールラウンドに施策の立案、実行の支援が可能。

対策の方向性

本テーマでのコラムでの2回目3回目を通じて、IT組織が抱えるコストと社員リソースの不足について述べてきました。
これらの対策の一つとして、本コラムでは「役務コストの最適化」「委託ベンダーのサービスインテグレータ化」を挙げたいと思います。

これは、前提として以下の状況下において取りうる選択肢の一つになると考えています

①運用保守においてベンダーに大きなコストをかけて委託を行っている
②現状ベンダーに委託しているものの、社員業務について移管が余り行えていない
③運用・保守体制がマルチベンダ化し、最適な体制か分からなくなってきている

端的に我々が考える対策の方向性を述べるならば、付加価値の低い定型業務はより安いコストで委託する形し、その分で作る原資を作り、
全体的なキャッシュアウトを抑えながら、委託範囲を拡大し、社員業務の委託を行う(ソーシング)ことです。
また、それに加えてそれらをワンショットの取り組みとするのではなく、最適に持続するためのベンダマネジメントの仕組みの構築(ベンダマネージメント)を含んだ取り組みです。
今後はこの対策方針をソーシング&ベンダーマネジメントと表記させていただきます。

先ほど、これらの取り組みを「我々が考える対策の方向性」と述べましたが、実は我々主導でこれを推奨しているという意味ではありません。
表現が異なったり、ソーシングやベンダマネジメントのどちらかだけだったりとケースは様々ですが、
実は「多くの企業が既に中期的な施策として挙げている」状況です。それらを支援する中で、共通解として導き出されたものだと捉えています。

 

前提として押さえるべきフレームワーク:SIAM(Service Integration and Management)

ソーシング&ベンダーマネジメントを行う上で、参考にすべきフレームワークはあるのか。結論としてこと細かくやり方を記すものはない認識です。
しかしながら、フレームワークが示す基本的な考え方を前提にすることで、実際に取り組む際に関係者と考え方を合わせることができます。

SIAMとは、複数のサービスプロバイダ、すなわちマルチベンダの体制において、それらをインテグレート(統合)して、ビジネス要件を満たしていくための知識体系となります。
ソーシング&ベンダーマネジメントにおける、社員業務をソーシングする際に、サービスインテグレータとサービスプロバイダの役割感を捉えておくと、関係者の合意形成がスムーズになります。

インテグレートという言葉だと捉えずらいですが、引っ越しという身近なイベントに照らすと少し理解が進みやすくなります。
引っ越しを行う際には、市役所に行き、住民票の異動や電気・ガス・水道、クレジットカードやその他住所変更のオンパレードになります。
ユーザー視点でいうならば、引っ越しという一つのイベントなのに、複数の対応をしなければなりません。

サービスプロバイダは個々のサービスの提供元に当たります。サービスインテグレータは、引っ越ししたいというニーズに対して、個々のサービスをまとめて、利便性を挙げてくれるコンシェルジュともいえるでしょう。複雑化したシステム環境では同様に複数のサービスが統合されて一つのニーズにこたえるケースが多く、それらを統合し、全体の成果に対して責任を持つサービスインテグレータの役割が必要となります。

 

もう一つサービスインテグレータとサービスプロバイダの役割の違いを示すイメージ示します。
サービスプロバイダは指示に基づいて業務を行うため、指示の内容が以上でも以下でもないです。また、先ほどのサービスプロバイダの範囲感を考えるならば、自身の担当領域までは押さえていても、全体を見て対応しないと作業の漏れによってトラブルにつながることもあります。
サービスインテグレータは全体の品質に責任を持つため、指示内容に漏れがあれば、それを正す動きまで求められます。

 

現状はサービスインテグレーションを社員が行っているケースが多い

ここまでの説明でお気づきの方もいるかもしれませんが、ベンダーに委託していてもそれはサービスプロバイダ的であり、ここで述べるサービスインテグレータの役割を社員が担っているケースが多いということです。
そのため、如何にサービスインテグレータを担ってもらえるかが社員業務の委託を実現するかどうかになってきます。
ではサービスインテグレータの役割をどうやって作っていけばよいのでしょうか。

サービスインテグレータの担い手とは

サービスインテグレータは前述した通り、サービス全体を理解している必要があります。顧客環境の理解とも言い換えられます。
一朝一夕で得られるものではないため、既存ベンダーが必然的に有力候補となります。
マルチベンダーといっても、最も大きく委託をしているプライムベンダーと呼べるベンダーがいるとは思います。そちらが第一候補になると思います。

とはいえ、プライムベンダーが本当にサービスインテグレータになりうるのか。その判断はしっかりと行っていく必要があります。
サービス全体の責任をとっていくことは、把握する範囲も広がりますし、商流をまたぐベンダー間の調整ごとなども入ってきます。
そして今回はあまり多くを触れませんが、ベンダー側のビジネスモデルを変革する話でもあるため、容易なことではありません。

実現したいことを適切に伝えた上で、真のパートナーとしてやっていけるかについては、慎重に判断いただき、本当に厳しいとなるならば、新規ベンダーへの移行に伴いインテグレータ化を目指すのも選択肢としては十分あるとは思います。

今回はここまでとし、サービスインテグレータの役割をどのように社員からベンダーに移管していくのかについての詳細が気になる方はこちらからお問い合わせいただけると幸いです。

今回は社員リソースやコストの課題に対して、ソーシングとベンダマネジメントという対策の方向性について述べました。
あとはその中の社員リソースの部分を解決であるソーシングにおいて前提知識として押さえておくべきSIAMにふれさせていただきました。

次回はソーシングのもう一つの側面である、全体的なキャッシュアウトを抑えるための取り組みについて触れたいと思います。
ご拝読ありがとうございました。次回をお待ちください。

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