コラム

統合フロントシステム(SoE)の導入アプローチ ~エンゲージメントを起点にする~

統合フロントシステム(SoE)の導入アプローチ ~エンゲージメントを起点にする~

2021年8月25日

 

著者: ⼭崎 芳弘

ITサービスマネジメント⼿法の適⽤領域をITに閉じられた世界からサービス事業へ展開すべく、事業領域のお客様と未来のサービスマネジメントについて設計・構築を行う。

お客様とサービスプロバイダー間のコミュニケーション、およびサービスプロバイダーの部門間(たとえば営業部門とサービス部門)のコミュニケーションにおいて、情報共有や適切なタイミングでの顧客とのタッチポイントなど様々な問題や課題がありますが、 その解決を支援するシステムを一般的にはSoE(システム・オブ・エンゲージメント)と呼びます。また、サービスマネジメント全体で、SoEが複数存在する場合、それらSoE群は分散化する傾向にあるため、データや情報の観点でSoE群を統合する統合フロントシステムが必要となります。この統合フロントシステム(SoE)の導入による費用対効果を最大化するためのアプローチをご紹介します。

 

統合フロントシステム(SoE)の機能と非機能の要件定義をする上で重要なことは?

世の中には、クラウドベースやオンプレベースの、様々な統合フロントシステム(SoE)のサービスや製品が存在しますが、単純に組織横断的な情報共有の仕組み(機能)を整備すれば課題が解決するのではなく、お客様へのサービス提供に関わるステークホルダーが、どのような目的で、どの情報を、どのタイミングで、どのような方法で、情報を参照する必要があるのか、あるいは入力または更新する必要があるのかを、お客様を含むすべてのステークホルダーが相互に期待値を正しく理解することで、統合フロントシステムに求められる機能と非機能の要件を定義することができます。

ここで最も重要なのは、「相互の期待値を正しく理解すること」であり、そのためのキーワードが「エンゲージメント」です。

 

エンゲージメントとは?

ここでは「人と人がお互いの価値観や感情に共感し、共通の目的や目標に向けて、信頼関係のもとで協同している状態」と定義します。

 

エンゲージメントが高い状態と、低い状態では、どのような違いがあるかをまとめたものが以下の表です。

比較項目 エンゲージメントが高い状態 エンゲージメントが低い状態
評価基準 価値の共創(アウトカム)・納得性 タスクの実行(アウトプット)・正確性
仕事のスタイル バリューストリーム/バリューチェーン プロセス
コミュニケーションのスタイル 対話による共感・集約化されたチャネル 会話による理解・散在化したチャネル
リーダーシップのスタイル 対話による共感・集約化されたチャネル ヒエラルキー、トップダウン
顧客に対するパフォーマンス指標 顧客ロイヤルティ・NPS 顧客満足度
組織に対するパフォーマンス指標 顧客生涯価値(LTV) 単年度売上・EBIT
従業員に対するパフォーマンス指標 Well-being度・従業員満足度  人事評価・給与・待遇


なお、今回はエンゲージメントに着目して、ステークホルダーの期待値を正しくとらえ、機能要件と非機能要件のアプローチについて紹介しましたが、お客様の期待値を的確に理解するためには、カスタマージャーニーという手法により、お客様とのタッチポイントの流れに沿って、お客様の感情変化をとらえることで、サービスに必要な機能的要件と非機能要件を特定するアプローチを使うことをお勧めします。この比較から、すべてのステークホルダーのエンゲージメントが高い状態の場合、統合フロントシステム(SoE)に関して、ステークホルダーが相互に期待値を正しく理解することができるため、結果として統合フロントシステムに求められる機能と非機能を、有効性と効率性が高く、結果として費用対効果が高い要件として定義できることになります。

 

逆に、エンゲージメントが低い状態の場合、以下の図ようにステークホルダーの期待値とのギャップが発生することになります。

 

 

統合フロントシステム(SoE)の導入アプローチ

統合フロントシステム(SoE)の導入においては、まずすべてのステークホルダーとのエンゲージメントを高めることを起点として進めることが有効であることをご紹介しましたが、その上でプロジェクトを以下のようなステップで進めることをお勧めします。

  1. サービス提供における様々な意思決定で必要としているデータや情報を軸として、すべてのステークホルダーの活動を洗い出し、各活動におけるお客様のニーズ(需要)と期待する提供価値を整理する(データドリブンな意思決定環境のグランドデザイン)
  2. サービス提供に必要なデータ・情報基盤となる基幹システム(SoR)の要件定義・設計・構築・展開を行う。
  3. 活動を行う上で必要となる統合フロントシステム(SoE)の機能と非機能を整理する。
  4. 統合フロントシステム(SoE)を選定する(RFP)
  5. 統合フロントシステム(SoE)を導入する。 
  6. 統合フロントシステム(SoE)の活用を定着させる。

 

今回は「統合フロントシステム(SoE)の導入アプローチ」をご紹介しましたが、次回は「全体最適化のためのガバナンス」に関してご紹介します。

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