コラム

ITIL®4で何が変わったのか?

ITIL®4で何が変わったのか?

2019年3月27日

 

著者: ⼭崎 芳弘

ITサービスマネジメント⼿法の適⽤領域をITに閉じられた世界からサービス事業へ展開すべく、事業領域のお客様と未来のサービスマネジメントについて設計・構築を行う。

ITIL®が12年ぶりにメジャーバージョンアップされ、2019年初頭、ITIL4として最新版がリリースされました。今回は、ITIL4の概要レベルを知っていただくことを目的として、ITILv3との比較も交えながらご紹介したいと思います。一部、私の解釈が含まれますことを予めご了承ください。

 

なぜ今、新しいITILなのか

ITIL v3がリリースされた2007年以降、多くの事が変わりました。現在、ビジネスにおけるITの役割の変化とともに、クラウド、モバイル、IoT、AI、ブロックチェーンなどのテクノロジーは、価値創造と競争優位性を築くための新たな機会となっています。また、これらの機会に合わせるように、DevOpsやアジャイル、リーンといった新たなプラクティスも生まれました。

このビジネス環境の変化で、「ビジネス」と「IT」をシームレスに繋ぎ、品質を安定させ、予測可能なものとし、迅速なサービス価値提供を実現するために、バランスの取れたマネジメントが必要となってきました。2019年、ITIL4は、今日のビジネス及びIT環境におけるサービスマネジメントの課題に組織が対応できるように必要なガイダンスとプラクティスを提供する目的でリリースされました。

● プロセス指向から全体論へ

● ライフサイクルからエンドツーエンドへ

● 重要なリリースから継続的改善へ

● サイロ化した運用から柔軟なバリューストリームへ

 

ITIL4 概念と原則

ITIL4では4次元モデルでサービスマネジメントを説明しています。

● 組織と人(Organizations and people)

● 情報とテクノロジー(Information and technology)

● パートナーとサプライヤ(Partners and suppliers)

● バリューストリームとプロセス(Value streams and processes)

 ITILv3では4つのPとしてpeople、process、product、partnerと呼ばれていたものと同じものです。これ自体は新しいものではありませんが、4つの側面として再構成されています。大きな違いとしては、情報の組み合わせです。テクノロジーとプロセス、プロセスとバリューストリームを組み合わせることなどです。あらゆる意思決定やアクションにおいて考慮する必要があります。

ITIL4 実践プロセス

ITILv3では、5つのライフサイクルフェーズとして戦略(サービスストラテジー)、設計(サービスデザイン)、移行(サービストランジション)、運用(サービスオペレーション)、継続的な改善があり、26のプロセスと4つの機能で説明されていました。ITIL4では、ITILv3でプロセスと機能と呼ばれていたものサブセットがマネジメントプラクティスに置き換えられています。ITIL4では、3つのカテゴリと34のマネジメントプラクティスとして再定義されています。

 

ITILのマネジメントプラクティス

一般なマネジメントプラクティス サービスマネジメントプラクティス 技術マネジメントプラクティス

● アーキテクチャ管理

● 継続的な改善

● 情報セキュリティ管理

● ナレッジ管理

● 測定と報告

● 組織変更管理(編制に関する)

● ポートフォリオ管理

● プロジェクト管理

● リレーションシップ管理

●リスク管理

● サービス財務管理

● 戦略管理

● サプライヤ管理

● 従業員のタレント管理(人材管理)

● 可用性管理

● ビジネス分析

● キャパシティとパフォーマンス管理

● 変更コントロール

● インシデント管理

● IT資産管理

● 監視とイベント管理

● 問題管理

● リリース管理

● サービスカタログ管理

● サービス構成管理

● サービス継続性管理

● サービスデザイン

● サービスデスク

● サービスレベル管理

● サービス要求管理

● サービス検証とテスト

● 展開管理(デプロイ)

● インフラストラクチャとプラットフォーム管理

● ソフトウェア開発と管理

 

ITIL4 サービスバリューチェーン

ITILv3のライフサイクル、戦略(サービスストラテジー)、設計(サービスデザイン)、移行(サービストランジション)、運用(サービスオペレーション)、継続的な改善は、サービスバリューチェーン(SVS)として6つの活動に置き換わっています。

 

ITILv3との対比

ITIL4 ITILv3
計画(Plan) サービスストラテジ
改善(Improve) 継続的改善

エンゲージ(Engage)

※顧客とユーザエクスペリエンス

設計と移行(Design and transition)

サービスデザイン

サービストランジション

調達と構築(Obtain/build)

サービスデザイン

サービストランジション

提供とサポート(Deliver and support) サービスオペレーション

 

ITIL4 サービス価値体系(service value system)

サービスバリューシステム(SVS)には次の5つの要素があります。

● 行動規範(Guiding principals)

● ガバナンス(Governance)

● サービスバリューチェーン(Service value chain)

● 実践(Practices)

● 継続的な改善(Continual improvement)

 SVSは価値創造を可能とするシステムとして、組織のすべてのコンポーネントと活動がどのように連携するかを説明しています。

 

ITIL 7つの行動規範

ITILの行動規範(Guiding principles)として次の7つが定義されています。

● 価値にフォーカスせよ(Focus on value)

● 今いるところから始めよ(Start where you are)

● フィードバックによって反復しながら進め(Progress iteratively with feedback)

● コラボレーションによって可視化を促進せよ(Collaborate and promote visibility)

● 全体を見て考え行動せよ(Think and work holistically)

● シンプルに、現実的に、(Keep it simple and practical)

● 最適化し自動化せよ(Optimize and automate)

 

今回は、ITIL4概要部分に触れてみました。ITIL4では、「価値にフォーカスする」「全体的・包括的に行動する」ことに重きを置いています。今までのITILv3の要素はそのまま取り込みながら、デジダル時代に必要な俊敏性と柔軟性を取り入れるためのプラクティスの説明に大部分を割いている印象がありました。

尚、当社ではITIL4の資格試験付きの講座を実施しております。
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