コラム

DXプロジェクトにおけるガバナンスの必要性とは? ~価値実現にフォーカスしたモニタリング&コントロールの仕組み~

DXプロジェクトにおけるガバナンスの必要性とは? ~価値実現にフォーカスしたモニタリング&コントロールの仕組み~

2021年9月15日

 

著者: ⼭崎 芳弘

ITサービスマネジメント⼿法の適⽤領域をITに閉じられた世界からサービス事業へ展開すべく、事業領域のお客様と未来のサービスマネジメントについて設計・構築を行う。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは?必要な能力とは?

DXとは、以下の能力を持つデジタル組織へと変革し、模倣困難で持続的な競争優位性を獲得することです。

  1. 顧客を中心に据えて、全社横断で、全ての意思決定を行う能力
  2. 卓越したオペレーション能力(高品質、低コスト、素早い変更)
  3. ガバナンスとリーダーシップ
  4. デジタルテクノロジーを調達して活用する能力

また、DXをプロジェクト化して推進するためには、以下の特徴に留意する必要があります。

  • 全社横断で顧客接点を全体最適化する必要がある(営業部門やサービス部門、バックエンドの業務部門が、個々の独立したプロジェクトとして進めると個別最適化になってしまう)
  • ビジネス変革を目指す上では、社員のマインドやカルチャーの変革が必要である
  • フロントシステムの統合、統合データ基盤などのプロジェクトがあり、業務変革を伴うプロジェクトを複数同時に推進する場合が多い

 

DXプロジェクトで発生しがちな問題とは?

DXプロジェクトでは、従来のITプロジェクトとは違った組織の能力を必要とし、前述した新たな特徴を持っているため、DXプロジェクトの目的達成を阻む、以下のような様々な問題が発生します。

  • DXプロジェクトの目的と目標が、ステークホルダー間で合意形成されずにプロジェクトが進むことにより、期待通りの成果が得られない
  • 各プロジェクトが社内の業務最適化の観点でばかり取り組んでしまい、カスタマージャーニー視点をおろそかにしてしまう
  • フロントシステム領域では、セールスとサービスがそれぞれの部門の考えで推進してしまう等、自部門にとっての便利機能を優先してしまう
  • システム間のデータモデルが異なる為、外部IFで複雑な変換が必要になってしまう
  • 個別プロジェクトが複数同時並行で推進中であるが、プロジェクト横断で活動状況をモニタリングしていない為、対象スコープの重複したプロジェクトが開始してしまう
  • 変革ポイントが設定・共有されていない為、各プロジェクトメンバは従来のシステム開発と何が違うのかが分からない
  • DXプロジェクトをリードする社員が兼務として参画し、プロジェクトの優先度付けやソリューション選定などの重要なタスクを外部にアウトソーシングしたため、特定のベンダーにロックインし、ベンダー間の調整がうまく機能しない

DXプロジェクトを成功させるために必要なことは?

想定される様々な問題を回避し、DXプロジェクトを成功させ、目的を達成するためには、組織レベルのマネジメント活動体系を整備し、そのマネジメント活動が向かうべき方向を示し、活動をモニタリングし、経営視点で評価と意思決定を行うガバナンス活動体系を整備する必要があります。

このように、マネジメント活動とガバナンス活動を体系的に実践することを「エンタープライズサービスマネジメント」と呼びます。

DXプロジェクトに必要なマネジメント活動体系とは?

すべての組織に適用可能なマネジメント活動体系のベストプラクティスはありませんが、ITILや、SIAM、COBIT、VeriSM、PMBOK、DevOpsなどのフレームワークや知識体系のプラクティスを組み合わせて、組織の課題に合わせて以下のようなマネジメント活動体系が有効であると判断できます。

 

この中のいくつかのマネジメント活動を紹介します。

組織構造デザイン

この活動では、DXプロジェクトの体制をデザインし、プロジェクトメンバの役割と、プロジェクトメンバ間の連携について定義します。

プロジェクト体制は、以下のように各事業部のガバナンス機能だけでなく、DXプロジェクトの目的を達成するためのオーナーシップが発揮できる事業部横断的なガバナンス機能を採用することが重要です。

サービス開発・運用(DevOps)

この活動では、サービス開発とサービス運用の活動がサイロになることなく、相互に密接に連携させることが重要であり、例えばDXプロジェクトにおける変更管理に関しては、プロジェクト横断での変更管理ルールを定義し順守することや、全体プロジェクトマネージャ(PM)/プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)がプロジェクト横断で変更の調整を行い、スケジュール・スコープ・コストに影響を与える事項については、定期的なオーナー報告会の中で共有し、組織全体として優先度の高い変更を推進するなどの活動をデザインします(以下の図のようなイメージ)。

 

DXプロジェクトに必要なガバナンス活動体系とは?

ガバナンス活動体系は、DXプロジェクトの目的と目標の整合性がある、価値実現とリスク最適化およびリソース最適化にフォーカスしたCOBITとVeriSMのフレームワークをベースにすることが有効です。

ガバナンス活動には、経営戦略に基づくマネジメント活動に対する「方向付け」の活動と、マネジメント活動の「モニタリング」の活動、モニタリング結果を「評価」し「コントロール」する活動で構成されます。

 

この「モニタリング」の活動の例として、プロジェクトのチェックポイントを明確化し実行するためのVモデル型のガバナンスモデルがあります。

このモデルにより、DXプロジェクトの目的・方向性との整合性を確認するために、個別プロジェクトのフェーズ毎のチェックポイントを明確化し、プロジェクトオーナ、および全体PM/PMOにてプロジェクト横断でのモニタリングを実施することで、DXプロジェクトが目指す価値を実現することができます。

 

このように、価値実現にフォーカスしたモニタリング&コントロールの仕組みをガバナンス活動に組み込むことで、DXプロジェクトにありがちな問題を回避し、DXプロジェクトの目的を達成することができるのです。

 

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